はいでるべるひ

くだらない

休職までのあれこれ①

4月の半ばに実家に帰ってきた。

 

変だな、と思ったのは2月の下旬ごろからだった。

朝、通勤のため満員の地下鉄に乗り込むとお腹が痛んだ。

朝ゆっくりトイレに行く時間もとれていなかったし、生理も近かったから調子が悪いのだと思た。

案の定、生理が始まると何事もなかったように電車に乗れたので不便はなかった。

 

3月の下旬ごろ、その日はいつもより電車が混んでいた(ような気がする)

いつものように地下鉄に乗っていると時間調整の為に少し停止した。

当時のわたしは会社についてから、誰もこない地下のトイレに寄る習慣があった。

朝時間がなくて塗り忘れていたリップを塗ったり、雨の日は湿気でぐちゃぐちゃになってしまった髪形を直したり、お気に入りの香水をつけ直したり。

 

なんとなく会社につく時間が遅れると少しめんどくさいなという思いがよぎった。

そして少し息が苦しくなった。

 

会社の最寄駅に着く時間が5分でも遅れると、更衣室で人に会う可能性が高まる。

自分を含め5人しかいない部署に所属していたわたしは、ほとんど会社の人との関りをもっておらず、社内ではおとなしい人で通っていた(と思う)。

そのため、更衣室で人と鉢合わせるのはとても苦手だった。

なにか「話さなくては」いけない、という思いが自分の中を支配して息苦しかった。

急いで制服のボダンを閉めて、ロッカーに備え付けてあった鏡もほどんど見ずに更衣室を飛び出すのだ。

もちろん会社の人はそんなことは気にかけていない。

誰もわたしが話しかけてくるのに期待などしていない。

それでもやっぱり苦しかった。

 

だんだん息が苦しくなってきた。

満員電車の中で、このまま人に押しつぶされて死んでしまうのではないかという思いがよぎる。酸素が薄くなって、呼吸の仕方を忘れそうだ。

手が震え、だんだん自分の世界が狭まってくるのを感じた。

 

思わず乗り換えの駅のひとつ手前で電車を降りた。

その日から、わたしは地下鉄に乗るのがとても怖くなった。